リアル『宇宙兄弟』

漫画『宇宙兄弟』の初めの部分の盛り上がりである「宇宙飛行士選抜試験」のリアル版です。あの実験棟での閉塞空間のなかでのグループワークです。たとえば、こんな課題が描かれています。
まずリーダーを一人選び、次に「設計」チーム、「製造」チーム、「品質管理」チームの3つに分かれ、レゴのようなプラスチック製のブロックで”空飛ぶ車”を10台作るというグループワークで課題をこなしていきます。

職業紹介業という仕事柄か、私は、人材採用という点で、JAXA(日本の宇宙航空研究開発機構)とNASA(アメリカ航空宇宙局)のやり方の違いに目がいきました。

JAXAは、国際宇宙ステーションの船長となりうる最高の人材の発掘を目指し、「医学審査委員会」「資質審査委員会」のそれぞれで、検査や面接が行われ、A、Bプラス、B、Bマイナス、Cといった段階制の評価が与えられ、これらはすべて点数に換算されました。なかなか数値化できない要素も、白熱した議論を経て、応募者にA、Bブラス、B、Bマイナスといった評価がつけられていき、得点の高い順から順位付けがなされたということです。そして最後は「宇宙飛行士審査委員会」が2つの委員会で審査した結果を総合評価するという念の入りようです。

これに対して、NASAはほぼ面接だけで採否が決まるというシンプルな採用試験を行っています。面接では、高校時代からの自分について話すよう、求められました。仕事にしても、プライベートにしても、どのような人間関係を築いてきたのか。どういう人間関係がよい関係だったか。逆に、悪い人間関係とはどのようなものだったか。その悪い人間関係は、どう改善すればよかったのか。自分の体験を答えるよう求められたのです。

なんだか、一般的に言われている採用方法とは、日米逆のような感じですね。NASAは、技術的な専門知識や、メカを操縦する力量など、宇宙飛行士として必要な技術的バックグランドは、その候補者の履歴書と、面接でのやりとりで十分見極められると考えているわけです。
NASAの面接官・リンゼー氏の言葉が心に残りました。「私たちが候補者を面接するのと同時に、候補者が私たちを面接して、宇宙飛行士の仕事とは何なのか、リスクは何か、どんな見返りがあるのか、そして宇宙飛行士としての人生とはどのようなものなのか、それらを理解した上で、それでもやりたい仕事なのかを考えてもらうことが重要なのです。」「候補者たちには、NASAが自分と家族の人生をかけるべき場所かどうかを、試験を通して逆に見極めてほしい」
つまるところ「この人間と一緒に働きたいかどうか」を見ているんですね。普段は良い関係を保てるかどうか。そして、いかなるときも仲間と助け合い、確実に物事に対処できるかどうか。そういうことが問われているようです。

ドキュメント宇宙飛行士選抜試験
大鐘良一、小原建右著
光文社新書刊

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品質マネジメントや工程管理、コンプライアンス、リスクマネジメントなどの仕事に携わり、仕組みを動かすのはひとだと痛感しました。ひとがイキイキすると、職場や社会もイキイキします。