どうして不正は発生するのか (No.6)

前回は、コンプライアンスを推進する体制として、防止機能、発見機能、対処・改善機能が必要というお話をしました。それでは、防止機能はどのようなものを考えればよいでしょう。今回は、そもそも、どうして不正は発生するのか。防ぐにはどうすればよいのかを考えていきましょう。

不正のトライアングル

ヒトが不正をはたらくメカニズムとして、米国の犯罪学者 ドナルド・R・クレッシー が提唱した不正のトライアングルというものがあります。

  1. 機会:行おうと思えば不正を行うことができる環境
  2. 正当化:不正行為をすることを自分の心の中で正当化できる心理状態
  3. 動機づけ(プレッシャーや動機):誰にも相談できない問題を抱え、自分ひとりの力だけでは、解決できない状態

この3つの要素がそろうと、不正が起こりやすくなると言われています。
もう少し具体的に、それぞれの要素の例を見てみましょう。

機会

  • 上司や周りの人たちからのチェックが入らない状態
  • 重要な決済の承認者が自分である
  • システムにログインしても、ログが残らず、だれがアクセスしたかわからない状態
    など

正当化

  • 自分だけでなく、周りの人もやっている
  • 自分が正しく評価されていない
  • そもそも、給料が少なすぎる
  • 借りただけで、後で返そうと思った
  • 会社を守るためだった
    など

動機づけ

  • お金が必要だった
  • ストレスを発散したかった
  • 不正を働かないと、立ちゆかなくなる
  • 会社から、課せられているノルマが重すぎる
  • 上司からの圧力があった
  • 外部から利益供与があった
  • 出世のために成果を出したい
    など。動機づけには、このように、個人的な理由と企業組織の理由があります。

 

不正の3要素を減らすには

それでは、3つの要素それぞれを減らすための方策を考えてみましょう。

機会

  • 不正を行わせないような仕組みの整備。例えば、他の人がダブルチェックする。一人で作業させず、必ず2人でする。など
  • 手続きの整備と遵守。申請者、承認者、使用者などを分ける。

正当化

  • 正当化を認めないオープンで公平な企業風土を醸成する。
  • 職業的自尊心やエンゲージメント・愛社精神を向上させる。そのためには、企業理念などの上位概念を浸透させる。

動機づけ

  • 企業組織の問題としては、過度なノルマやプレッシャーを与えないようにする。
  • 一方、個人的な理由は、個々人の課題であり、外部からの介入は難しいけれど、相談できる雰囲気の醸成、相談窓口、ホットラインの設置と運営などが考えられます。

不正の機会を減らすための制度改革、仕組みの整備というのが、着手しやすく、周りからも分かりやすいためか、これに偏りがちになる場合が多いように感じます。しかし、ある調査結果によると、従業員のコンプライアンス意識と職場の風通しには相関があることが分かっています。また、上司のマネジメント力も大いに影響するようです。正当化や動機づけの2要素を減らすためにも、風通しやマネジメント力の向上が望まれます。

また、コンプライアンス推進体制のところで、お話しした通り、望ましい価値観に従った行動への動機を与えるとともに、間違った行為の発生を防ぐためには、繰り返しの教育・研修が必要です。

このように、コンプライアンスの推進は、会社全体で、多角的、総合的に取り組む必要があります。

(次回は、どのようにコンプライアンス研修を進めたらよいかを考えてみましょう。)

ABOUTこの記事をかいた人

Thomas

品質マネジメントや工程管理、コンプライアンス、リスクマネジメントなどの仕事に携わり、仕組みを動かすのはひとだと痛感しました。ひとがイキイキすると、職場や社会もイキイキします。