会社を辞めたくなる人事異動

組織の将来を左右するのは人材の育成と配置である。
今日の意思決定が将来実を結ぶか否かは人材の育成と配置にかかっている。
(P.F ドラッカー『変貌する経営者の世界』より)

モチベーションを下げる『穴埋め人事』

ネガティブな配置転換

「○○さん、経理でまた人が辞めて回らないから、来月から経理に行ってね。大丈夫、前職で似たような仕事してたでしょ。よろしくね。」

「○○君、来月開設する営業所に行ってくれないか。君はまだ独身で身軽だから。それに新しい仕事を覚えるのもいいと思うから。頑張って!」

こんな感じで配置転換を命ぜられたり、要求されたりした経験ありませんか?
明らかに穴埋め的な理由で人事異動を余儀なくさせられたというケースは意外に多い様です。

しかし、自分では今担当している仕事が向いていると思っていても、組織に属している以上「会社の命令なら仕方がない」と渋々従うしかないのも事実です。
始めから3年程度で転勤や異動があると分かっている会社なら、それなりの心構えもできると思いますが、せっかく仕事を覚えてその楽しさや課題も見えて来た頃に、突然転勤や配置転換を命ぜられると、何だか急にモチベーションが下がり、「この機会に会社を辞めようかな?」と思ったりします。

もちろん、本当に辞めるか否かはその人次第ですが、本人が納得しない転勤や配置転換は、離職を考えるきっかけになります。特に、今の仕事にやりがいを感じている時に「穴埋め人事」を命ぜられた時は尚更です。

本来なら、「適材適所」の人員配置が望ましいことは、誰でも知っています。
でもその反面、会社にはそう簡単にはいかない”大人の事情”があることも事実です。

結局は、納得のいかない穴埋め人事であろうと、「出世に響くから従おう」とか「これも何かのチャンスかもしれない」など考えて乗り越えるしかないのです。(今までは…)

穴埋め人事こそ人事異動?

そもそも「穴埋め人事」を行っていることを自覚している企業はどのくらいあるのでしょうか?
私のような昭和世代のほとんどは、「それが人事異動だろ」と普通に思っているのではないでしょうか?

誰かが定年退職したり、自己都合で離職したりすることはどこの企業にも起こることですが、その都度空いた椅子を誰かが埋めなければ仕事は回りません。それに、皆がそれぞれ好きな仕事だけをする職場なんて在り得ないという考え方が普通だと思います。
なので、必然的に人事異動は”穴埋め”のような状態になるのです。

それでも、虎視眈々と誰かの椅子を狙っていて、次の人事では希望の部署に異動になったり、昇進や栄転を心待ちにしている社員が存在するのもよくある話だと思います。

つまり、いくら”穴埋め”でも、人によってはそれがモチベーションを上げるきっかけになることも事実です。
ところが、これからはそうは行きません。

人事異動や配置転換こそ、最新の注意を払うべき時代になるのです。

出世したくない若者たち

ここ数年の動きとして、若者の出世離れが問題視されていることをご存知ですか?

公益財団法人日本生産性本部によると、平成30年度の新入社員の意識調査では、「働き方は人並みで十分」が61.6%、「好んで苦労することはない」が34.1%で、過去最高を更新したとの結果が出ています。
他にも様々なメディアや情報期間で意識調査がなされているようですが、どの結果も、若者は「将来出世して稼ぎたい」というよりも「より自分らしい働き方をしたい」と望んでいる様です。

今現在、この数値や傾向をどう捉えるのかは、それぞれ意見が分かれることとは思いますが、いわゆるミレニアル世代(Y世代)や、その後に続くZ世代の価値観が、ここ5年から10年の間には過半数を占めることは間違いありません。
もちろん、人事異動と若者の出世が完全にリンクするわけではありませんが、少なくとも責任の重いポジションに自ら手を挙げて挑戦したいという若者は、今後ますます少なくなると見ておいた方がよいと思います。
例えば、良かれと思って係長に抜擢した途端に、「辞めます」という若者が増える時代になるのです。
そうなれば、今までの組織の在り様さえ考え直す事態になるのです。

にわかには想像できないかもしれませんが、働き方も、組織の形も、そして役職という重みも、これからの若者が持つ価値観と、昭和世代が経験の中で積み上げて来たそれとは、大きな隔たりがある事に真摯に向き合わなければ、ほんの5年先さえ危うくなるのです。

ミドル社員の育成を後回しにする企業に明日は無い。

「組織の将来を左右するのは人材の育成と配置である。」
冒頭に紹介したように、ドラッカーも人材の育成の大切さを説いています。

人材育成なら新入社員というイメージが強いと思いますが、実は今、多くの企業で最も苦戦しているのが、「ミドル社員の教育」と言われています。
新入社員に仕事を教えるのは当然ながら、会社の風土や仕事に対する姿勢など、組織人としての素養を教えるべき中間層の社員の育成がなかなか上手くできていないという企業が多いということです。

出世を拒む若者が増える背景には、前述の世代による価値観が影響していることに加えて、これまで納得のいかない人事に渋々従って来た中間管理職の指導力にも問題があるとの指摘もされています。

例えば、(株)タバネルが実施した「上司についての意識調査」では、『「良い上司」は14%しかいない!部下と上司、チームとの相互理解が「良い上司」の条件!』と報告しています。
さらには、良い上司の部下ほど、仕事にやりがいを感じる割合が高いという結果も出ています。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000035275.html

つまり、今多くの若者が、将来像でもある上司に魅力を感じられないのです。
「○○さんの様な人になりたい!」「○○さんの様な仕事がしたい!」と言わせるような上司を育てることこそ、今やるべきことではないでしょうか?

そして、若者が辞めたくなるような、一方的な穴埋め人事ではなく、組織と個人、上司と部下の相互理解を促進するような対話のある組織作りにシフトするべきではないでしょうか?

ABOUTこの記事をかいた人

yasuhiro kouno

キャリアコンサルタントの高野(こうの)です。 「競争社会から共創社会へ」という大きな夢の実現を目指しています。 自分では気づかない未知の可能性に気づく体験プログラムを、多くの方に味わっていただきたいと思っております。