やる気の方向性「前向き」の正体

前向きとポジティブを混同してはいけない

どの職場にも「前向きな人」と称される社員はいると思います。
一般的には、ミスをしても「良い教訓になった」とか、上司から叱られても「自分に期待してくれている」と思えるような人のことを指します。
つまり、マイナスな状況になっても、考え方をプラスの方向にしてその状況を乗越えて行けるような人のことを現していると言えます。

他方、いつまでもミスのことを悔やんだり、叱られたことに傷ついて悲しんだりしている人のことを「後ろ向きな人」と表現します。
つまり、マイナスな状況になったら、そこからさらにマイナスの方向に深入りしてしまうような人のことを表現していると言えます。

実は、これって本当はポジティブかネガティブかという考え方や捉え方の違いのことで、「前向きや後ろ向き」とは少し違います。
そもそも、「前向き」の反意語は「後ろ向き」に違いありませんが、前向き=ポジティブ、後ろ向き=ネガティブという結び付けは、職場において社員の評価を間違える危険性があります。

なぜなら、人は前向きでもネガティブになれるし、ポジティブな後ろ向きにもなれるからです。

整理をするとこうなります。
「4つの方向性」
①前向きでポジティブ
それはやるべきだ、そのためにはこうしよう!
②後ろ向きでポジティブ
それより他のことをしよう、こんないいことがあるぞ!
③前向きでネガティブ
それはやるべきだ、でもリスクがあるのでは?
④後ろ向きでネガティブ
それはすべきでない、リスクがありすぎる!

これは、「前向き・後ろ向き」を意欲の方向性とし、「ポジティブ・ネガティブ」は思考の方向性として捉え、それらを組み合わせて4つに分類したものです。

人はこの4つの方向性を内包しており、時と場合で使い分けていると考えられます。
つまり、あるプロジェクトに対しては前向きでポジティブに取り組む人でも、違う案件では後ろ向きでネガティブなこともあるし、また別の仕事では前向きでネガティブの側面も見せる。といった感じです。
立場や役職でも、その方向性の出方は変わりますが、中には何をやっても前向きでポジティブな人もいるように、その人の本来持っている興味や信条によって、4つの方向性の出方には特性があるようです。

評価を間違える危険性とは、この4つの分類の中で、①前向きでポジティブな側面だけが評価されやすいという点です。
そしてもう一つ、決定的に見落としやすいのが、誰から見た方向性かという点です。

前向きの前ってどっちから見た前?

人は、立場や役割でものの見方も変わることは誰でも知っていますが、会社(組織)が進むべき方向というものは、頻繁に確認しなければ、すぐにバラついてしまうことは、あまり知られていなようです。
優れたリーダーは、理念や目標を何度も何度も口にすると、あのドラッカーも言っているように、職場においては進むべき方向をいつも明確にして確認しておかなければ、「自分は会社のためを思って…」と言いながら、上司の意に反する行動をとる社員が出てきたりするなど、各々が勝手に認識する方向になりやすいのです。
多くの会社で、社訓や理念、さらに目標数値などが事務所の壁に陣取っているのは、皆が向かうべき方向を認識するためです。しかし、壁に貼っているだけではその効果も薄れて行きます。

では、先ほどの4つの分類に戻ります。
さて、この4つの分類の中で「意欲の方向」は、誰から見た方向に基づいているかと言うと、もちろん会社側であり、経営者です。
つまり、組織における「前向き」とは経営者が望む意欲の方向のことで、経営判断で決めた方針に従うことを意味します。(よし、そうしよう!という意欲を持つこと)
したがって「後ろ向き」とは、そうでないという意味になります。
ただし、ここで注意が必要です。「後ろ向き」は、本人のやる気や姿勢の問題ではなく、そもそも意欲の方向性、つまり理念や方針といった進むべき方向を、経営者が確り認識させていないケースも多々あります。

経営者から見れば、方針に従わない行為に見えても、当事者から見るといたって前向きかもしれません。
ただ、向かうべき意欲の方向を勘違いしているかもしれないし、しっかり理解していないかもしれないのです。先述の「会社のためを思って…」がこのパターンです。
上記の4つの分類では、②の後ろ向きでポジティブな側面がそれに当たります。
これも、やはり職場環境の問題という訳です。

実は、本当に後ろ向きの社員はいない。

実はどの会社の社員も、基本的には皆前向きになります。
前回、前々回にも触れましたが、人は環境に支配されます。
したがって、会社の理念や方針が明確に示されており、皆が共通認識さえしていれば、自ずとその環境に適応しようとするのが人の行動原理です。

危ういのは、皆分かっているはず。もう言わなくても分かっているよね。といった雰囲気になることです。
今ではその様子も変わったようですが、ひと昔前なら朝礼で大きな声で社訓を叫んだり、社歌を合唱したりしたのは、実は社員の意欲の方向を統合する行為の一つだったのです。
時代が変わり、個別性を問われ始めた昨今では、専ら個別面談という形式で、経営者や上長が部下一人ひとりの話を聴くという活動を通して、意欲の方向を会社に合わせているのです。

離職者の多い会社は、この点で環境整備が不足していると、私は推測しています。

ネガティブがなければ、暴走する。

次に、ポジティブとネガティブですが、この2局的な方向にも、間違えやすい落とし穴があります。
一般論として、ネガティブな志向はあまり歓迎されませんが、職場においては、物事を悪い方向で考えることはとても大事なことです。
よく、リスク管理という言葉で表現されていますが、経営は常に最悪の状況も想定して対応できるようにしておく必要があります。
何でもかんでも良い方向になるなんて甘い世界ではないことは皆知っているはずです。

つまり、ネガティブだからこそリスクヘッジのアイデアが出て来ることもあるし、ネガティブだからこそ根本的な問題が可視化されたりするのです。
上記の4つの分類では、③の前向きでネガティブな側面がそれに当たります。

離職意識の芽生え

では、④の後ろ向きでネガティブな側面は、どんな時に出やすいのでしょうか。
それには大きく二つあります。
まずは、会社や組織にブレーキをかける必要が生じた時です。
どの会社の社長も上長も、全知全能の神ではありません。したがって方向性を見誤ることもあるでしょう。
そんな時こそ、後ろ向きでネガティブな側面が功を奏したという例はいくらでもあります。
組織においては、時として毅然と「NO」と言える存在も必要不可欠です。

そしてもう一つが問題です。④の側面が、内省的に出始める時があります。
それは、失敗が続いたり、なかなか成果が出せずにいる時や、社内で孤立感をお覚えたり、ハラスメントに遭った時です。
多くの場合は、ほんの些細な事から始まりますが、恐いのは、この側面が頻繁に顔を出し始めると、「どうせ出来やしない」「やっても意味がない」「自分など必要ない」といった、負の連鎖に一気に陥ってしまうことです。

それが、離職意識の芽生えです。
このような状態に陥る前に必要な対処法こそ、個別面談であり、適切なカウンセリングです。

今、多くの中小企業に圧倒的に不足しているのが、ストレスを上手く発散できる環境作りです。
その改善策についてはまた詳しく紹介します。

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yasuhiro kouno

キャリアコンサルタントの高野です。 「競争社会から共創社会へ」という目標に向かって、人を仕事に合わるのではなく、人に合わせた仕事の創出のお手伝いをしています。