夢中になったことありますか

ウォーターラインシリーズというプラモデルのシリーズがあります。1/700の縮尺で、吃水線より下を省略し、水面より上のみを表現した艦船のプラモデルのシリーズです。私は、子どものころ、このプラモデル作りにハマりました。時間が経つのも忘れ、辺りが暗くなり、母親の「ご飯だよ」の声も耳に入らず、何時間も没頭して、プラモデル作りをしていたものです。
この時の状態が「フロー」と呼ばれるものだったのだと思います。今日紹介する本書によると、時の経過と自我の感覚を失ってはいるけれど、自分の行動はコントロールできているという感覚があり、世界と一体化しているとさえと感じることがあるようです。スポーツ選手は「ゾーンに入った」と言い、宗教的な神秘主義者は「エクスタシー」、画家や音楽家は美的な恍惚状態と言うものが、この「フロー」とう状態です。
フローを体験している時は、自分の内面の状態に集中しており、感情を感じる余裕はありませんが、最高のパフォーマンスが発揮できます。そして、取り組んでいることが終わり、振り返る余裕ができたとき、その体験のすばらしさへの感謝でいっぱいになり、幸福感を感じることができると言われてます。

フロー状態が起こりやすいのは、
1.何をすればよいか分かっていて、はっきりした目標がある。
2.自分がどれくらいうまくできているかがはっきりわかる。
3.自分のスキルに釣り合っていて、少しのチャレンジをしている。
という3つの条件がそろった時です。

日々の生活の中には、やらなければならないことをやっている時間、やりたいことをやっている時間、特にやることがなくて漫然と時を過ごしている時間があるでしょう。生活の質を上げるためには、どのように過ごせばよいのでしょう。
生活の中には、くつろぎは必要です。のんびりテレビを観るのもいいでしょう。しかし、たくさん行えば行うほどよい影響を与えるというわけではないようで、少しの時間で十分なようです。また、ヒトは一人でいると気分が落ち込ん見やすいということもいろいろな研究で分かっていますので、一人っきりで過ごすのは避けたほうがよさそうです。漫然と過ごすだけでは、生活の質を上げるには限界がありそうです。
自由時間にレジャーや娯楽などやりたいことを楽しむというのもよさそうです。しかし、フローを生み出すには、明確な目標、明確なルール、迅速なフィードバックが必要です。したがって、フローを生み出して、楽しめるようになる前には、多くの注意力とエネルギーが必要です。スキルが必要ないような受身的なレジャーや娯楽ではフローは生み出せません。私は、2年間ゴルフスクールに通いましたが、結局、フロー状態は現れず、ゴルフはやめてしまいました。きっと自分のスキルに不釣り合いだったのか、努力が足りなかったのでしょう。
やらなければならないことの筆頭は仕事でしょう。そして、多くの人は、生活費を稼ぐために必要だが、無味乾燥でストレスが多く、できれば避けたいものと感じているのではないでしょうか。とてもフローを生み出せるようには思えませんね。
しかし、逆説的ですが、もし、仕事で、明確な目標を示し、明白なフィードバックを行い、働く人のスキルに見合ったチャレンジをし、注意散漫になることがないように環境を整えることができれば、仕事がもたらす感覚は、スポーツや芸術活動をしている時に体験する感覚と、それほど変わらないものになると、著者は述べています。
実際、大人の生活の中では、自由時間よりも仕事時間の方が、フロー状態になる機会が多くあります。これからの管理者は、働く人がどのように仕事を体験するかを考える必要があるでしょう。

結局、毎日の生活がすばらしいものになるかどうかは、何をするかではなく、どのようにするかにかかっています。
フローをもたらす条件は分かっていますが、実際に生活のなかで私たち自身が自力で発見しなければなりません。しかし、日本文化は遥かな昔からフローの起こし方を理解していた。武道、茶道、建築、俳句などフローを可能にする活動の型は数多くあると著者は言っています。

フロー体験入門 楽しみと創造の心理学
M・チクセントミハイ著、大森弘監訳、世界思想社刊

 

ABOUTこの記事をかいた人

Thomas

品質マネジメントや工程管理、コンプライアンス、リスクマネジメントなどの仕事に携わり、仕組みを動かすのはひとだと痛感しました。ひとがイキイキすると、職場や社会もイキイキします。