「失敗なんかしちゃいない。うまくいかない方法を一万通り見つけた だけだ」

発明王トーマス・エジソンのことばです。

失敗はとかくマイナスに見られがちですが、じつは新たな創造の種となる貴重な体験なのです。創造力を身につける上でまず第一に必要なのは、自分で課題を設定する能力です。
「こうすればうまくいく」という知識伝達では、結局はマネでしかありません。「こうやるとまずくなる」という知識伝達によって、まずくなる必然性を知って企画することにより、1ランク上の創造の次元から企画をスタートさせることができます。
と本書のプロローグにもあるとおり、随所にアイディアを創造につなげるためのヒントがちりばめられています。特に第五章には、具体的な発想方法が述べられています。

物事を理解するとき、たいていの人は、樹木構造で順序立てる。思考をひとひとつのパートごとに整理して樹木構造の形にして、全体についての理解を身につけます。樹木構造は、対象を単純化してわかりやすく理解するには優れた方法ですが、あるテーマから、筋道だった展開があって、目標達成というゴールにいたる創造の道を最初からたどることは、現実の思考の中では滅多にありません。実際には、まずテーマがあって、その次に達成目標を思いついて、その後にそれを補強するための筋道を立てるというプロセスをたどるほうがむしろ自然です。
思考平面というものを仮想し、思考平面上に思考テーマと目的の達成を置く。思考テーマから目的の達成へいたりそうなアイデアの種になるソース(源)はいろいろなものがある。知識、山勘、経験、生き方、好みなどばらばらのアイデアの種がひとつの思考平面上に落ちてくる。ここから思考作業はスタートする。このアイデアの種は、瞬間的かつ同時にたくさんのものがなんの結びつきも論理性もなくバラバラに現れる。この段階では、各々のソースから生み出されてきたアイデアの種は完全に孤立し、お互いの結びつきなどまったくない。そして、孤立したこのアイデアの種と種を結びつけ、脈略を持たせる作業が思考の中でも最も大事な部分です。
アイデアの種の結びつきを何度も繰り返しやり直していく。最初はとにかくなんでもいいから始点から終点まで脈略をつけてみるのがコツだ。うまくつながらないときは潔く試していた脈略をあきらめて、まったく別のやり方でつなげてみる。こうした「仮説立証」と呼ばれる試行錯誤を繰り返す。創造力に優れている人には、この脈略のつなぎ方に「思考のけもの道」のようなものができており、安全に便利にいつでも使える思考パターンがを持っている。一方、学校の授業で教える知識は、すでに改良が加えられて、課題から結論までが無駄なく一直線の状態にあるものがほとんどで、アイデアの種が脈絡づけられて階へとつながるというプロセスが欠けている。仮説立証によってとにもかくにも始点から終点までつながった状態になれば、つぎは、「仮想演習」で想定される様々な状態を考えてシミュレーションを行う。
思考平面上で、スタート地点からゴールに向かって脈絡づけられた流れは、思考展開図で考えることもできる。
  企画テーマを分析し、課題を抽出する。
  →課題を分解し、課題要素にわける。
  →個々の課題要素を具体的な解決方法へと写像する。
  →解決方法を展開して具体案を立案する。
  →具体案を統合して目的達成する。
この基本過程を行きつ戻りつしつつらせん状にたどって、完成します。

この他にも、本書では、創造力、企画力を高め「思いつきノート」や、自分の考えを他者に伝える「表プラン」ではなく、企画の意図や脈絡、思考プロセス、失敗情報などを含んだ「裏プラン」についても語られています。

失敗学のすすめ
畑村洋太郎著、講談社文庫刊

 

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Thomas

品質マネジメントや工程管理、コンプライアンス、リスクマネジメントなどの仕事に携わり、仕組みを動かすのはひとだと痛感しました。ひとがイキイキすると、職場や社会もイキイキします。