「失敗なんかしちゃいない。うまくいかない方法を一万通り見つけただけだ」

トーマス・エジソンの名言です。

失敗はとかくマイナスに見られがちですが、じつは新たな創造の種となる貴重な体験なのです。
「こうすればうまくいく」という知識伝達では、結局はマネでしかありません。「こうやるとまずくなる」という知識伝達によって、まずくなる必然性を知って企画することにより、1ランク上の創造の次元から企画をスタートさせることができます。
と今日ご紹介する「失敗学のすすめ」のプロローグにも書かれています。失敗をテーマにしつつも、失敗にとどまらず、随所にアイディアを創造につなげるためのヒントがちりばめられた本です。

物事を理解するとき、たいていの人は、樹木構造で順序立てます。思考をひとひとつのパートごとに整理して樹木構造の形にして、全体についての理解を身につける。樹木構造は、対象を単純化してわかりやすく理解するには優れた方法ですが、あるテーマから、筋道だった展開があって、目標達成というゴールにいたる創造の道を最初からたどることは、現実の思考の中では滅多にありません。実際には、まずテーマがあって、その次に達成目標を思いついて、その後にそれを補強するための筋道を立てるというプロセスをたどるほうがむしろ自然でしょう。
何かテーマを見つけ、それを実現する方法を考えるとき、関連しそうなアイデアの種がいろいろ浮かんでくるでしょう。これらのアイデアのソース(源)もいろいろなものがあります。知識、山勘、経験、生き方、好みなど、様々なソースからばらばらのアイデアの種が、瞬間的に、そして同時にたくさん、なんの結びつきも論理性もなくバラバラに現れてきます。この段階では、各々のソースから生み出されてきたアイデアの種は完全に孤立し、お互いの結びつきなどまったくありませんが、思考はここから始まります。
孤立したこのアイデアの種と種を結びつけ、脈略を持たせる作業が何度も何度も繰り返されていきます。最初はとにかくなんでもいいから始点から終点まで脈略をつけてみるのがコツです。うまくつながらないときは潔く試していた脈略をあきらめて、まったく別のやり方でつなげてみる。こうした試行錯誤を繰り返すことによって、だんだんと現実味を帯びてきます。
創造力に優れている人には、この脈略のつなぎ方に「思考のけもの道」のようなものができており、安全に便利にいつでも使える思考パターンがを持っているのでしょう。一方、学校の授業で教える知識は、すでに改良が加えられて、課題から結論までが無駄なく一直線の状態にあるものがほとんどで、アイデアの種が脈絡づけられて階へとつながるというプロセスが欠けているようです。
試行錯誤によって、とにもかくにも始点から終点までつながった状態になれば、つぎは、想定される様々な状態を考えてシミュレーションを行います。企画テーマを分析し、課題を抽出する。→課題を分解し、課題要素にわける。→個々の課題要素を具体的な解決方法へと写像する。→解決方法を展開して具体案を立案する。→具体案を統合して目的達成する。この基本過程を行きつ戻りつしつつらせん状にたどって、完成します。

この他にも、創造力、企画力を培うために著者が日頃からやっている「思いつきノート」や
企画や設計など創造的な仕事で誰かに自分の考えを伝える場合の企画書や設計図などの「表プラン」ではなく、企画の意図や脈絡、思考プロセス、失敗情報などを含んだ「裏プラン」の書き方など、創造のための手法が紹介されています。

失敗学のすすめ
畑村洋太郎著、講談社文庫刊

 

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Thomas

品質マネジメントや工程管理、コンプライアンス、リスクマネジメントなどの仕事に携わり、仕組みを動かすのはひとだと痛感しました。ひとがイキイキすると、職場や社会もイキイキします。