問題解決に行き詰ったら「たった一つを変えるだけ」

私が受けた教育は、速く正確に正解を当てることが重視された正解主義の教育でした。しかし、インターネットの発達で、情報はすぐに調べられるようになってきました。むしろ、あふれかえる情報を取捨選択し、自ら課題を見つけ、解決するといった情報を編集する能力が求められるようになって来ています。人工知能(AI)の発達にともなって、この傾向に拍車がかかるでしょう。

2020年度から始まる新しい「学習指導要領」では「生きる力」を前面に揚げ、主体的・対話的で深い学びの視点から「何を学ぶか」だけでなく「どのように学ぶか」も重視するといっており、「知識及び技能」だけでなく、学んだことを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力」、「人間性」や未知の状況にも対応できる「思考力」、「判断力」、「表現力」をバランスよく育むと言っています。
経済産業省は、個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるための「人生100年時代の社会人基礎力」として、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力が必要だと言っています。

本書では、タイトル通り、たった一つを変えるだけで、「前に踏み出す力ー主体性、働きかけ力、実行力」「考え抜く力―課題発見力、計画力、創造力」「チームで働く力ー発信力、傾聴力、柔軟性、状況把握力、規律性、ストレスコントロール力」が身につくようになる魔法のような方法があるといっています。

その方法とは、「質問づくり」をすること。
本書は、教員向けの授業のすすめかたとして書かれており、「質問づくり」を授業に加えたとしても、これまでの授業の九割は元のままでよいのです。
そして、本書に書かれていることは、学校教育だけでなく、企業や社会での問題解決のための話し合いにも応用できる内容です。私と同世代の方々は問題解決など体系的に学んだことはないのではないでしょうか。本書は、非常にシンプルにその方法を示してくれます。

「質問づくり」の手順は、
①「質問の焦点」は、教師によって考えられ、生徒たちがつくり出す質問の出発点となる。
②単純な4つのルールが紹介される。
 ・できるだけたくさんの質問を出す。
 ・(それらの質問について)話し合ったり、評価したり、答えを言ったりはしない。
 ・発言のとおりに質問を書き出す。
 ・肯定文として出されたものは疑問形に転換する。
③生徒たちが質問をつくり出す。
 時間内にできるだけたくさんの質問をつくる。
④生徒たちが「閉じた質問」と「開いた質問」を書き換える。
 「閉じた質問」と「開いた質問」の長所と短所を分析することは、質問の役割や目的について考えたり、質問の仕方によっては情報を引き出しやすくしたりすることを生徒たちに気付かせる。それによってメタ認知思考を高めることになる。
⑤生徒たちが優先順位の高い質問を選択する。
 まず、教師から、選ぶ視点や基準が提供される。三個程度の質問が選ばれる。
 選んだ質問を見ながら、必要としている情報を得るためにどのように役立つかを検討する。どれが効果的な質問かを判断する。質問の順番についても話し合う。
⑥優先順位の高い質問を使って、教師と生徒が次にすることを計画する。
⑦ここまで行ってきたことを生徒たちが振り返る。
 質問づくりのこれまでの各段階で、生徒たちが学んだことは何か?
 どのようにして学んだか?
 今わかったことや知りたいと思うことは何か?
 学んだ内容とかその方法(スキル)をどのように応用できそうか?

たった一つを変えるだけ
ダン・ロススタイン、ルース・サンタナ著、
吉田新一郎訳、新評論刊

 

ABOUTこの記事をかいた人

Thomas

品質マネジメントや工程管理、コンプライアンス、リスクマネジメントなどの仕事に携わり、仕組みを動かすのはひとだと痛感しました。ひとがイキイキすると、職場や社会もイキイキします。