【トーマスの読書室】しあわせってなんだっけ?

従業員満足度は従業員のパフォーマンスに比例しないが、従業員幸福度は従業員のパフォーマンスに比例し、幸福感が高い従業員の生産性は30%高いとの研究報告もあります。会社経営でも、幸福経営、ウェルビーイング経営が注目されるようになってきました。

では、「しあわせ」ってなんなのでしょう?
「十分なお金があること」
「夢をかなえること」
「好きな人と一緒にいられること」
「楽しいイベントがたくさんあること」
「平穏で何もないこと」
「今を思いっきり生きること」
「死ぬ瞬間に、ああ、いい人生だったと思えること」
「そもそも人それぞれなので、定義できない」
 ……
改めて問われると答えづらいですね。心理学の世界でも、しあわせや幸福はあまり研究対象になっていなかったようで、盛んに研究されるようになったのは、21世紀になってからだそうです。

エンジニアであった著者は、ロボット研究や脳科学の研究から幸福学の研究を始めたという異色の経歴をお持ちです。そんな前野先生だからこそできたことなのでしょう。多くのデータを集め、統計学を駆使して、この捉えがたい「幸せ」について、四つの因子を導き出されました。

第一因子:やってみよう因子…自己実現と成長の因子
第二因子:ありがとう因子…つながりと感謝の因子
第三因子:なんとかなる因子…前向きと楽観の因子
第四因子:あなたらしく因子…独立とマイペースの因子

最近のポジティブ心理学によると、
所得、社会的地位、物的財などの地位財による幸福は長続きしないが、健康、自主性、社会への帰属意識、良質な環境、自由、愛情などの非地位財による幸福は長続きするそうです。それにも関わらず、人は所得などの特定の価値を得ることを過大評価してしまう傾向がある。(フォーカシング・イリュージョン)
楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのかもしれない。
上を向くとポジティブに関連性に着目した思考ができる。
悪い点を指摘するときも、○○はよかった さらに××を△△したらもっといい という言い方をする。
人間は、期待されると、期待された通りの成果を出す傾向がある。(ピグマリオン効果)
美しいものをただ見ているだけでは幸せになれないが、美しいものを創造している人は幸せになれる。
などの研究成果が得られているそうです。

そして、幸福は、目指すべきものではなく、メカニズムを理解すべきものとの指摘があります。メカニズムを理解すれば、目標はわかりやすくなり、わかりやすい目標を持つと、人間の脳は、意識せずとも、おのずと幸福を目指すようになる。

その手法の一つとして、カレンダー○×法というのが紹介されています。毎日、寝る前に、一日を振り返る。幸せな日は○、不幸せは×、中くらいは△。その理由を簡単に書き添えておく。すると、自分の幸せがみえてくる。

それぞれの仕事が人々の幸せにつながり、それぞれの仕事が、社会と自分を幸せにする、そんな社会になるように、仕組みを作っていきたいですね。

幸せのメカニズム 実践・幸福学入門
前野隆司著、講談社現代新書刊