【トーマスの読書室】信頼と共感で成り立つ経済の仕組み

リーマン・ショック以来の経済の長期低迷はようやく脱しつつあるといわれていますが、日常生活ではあまり実感できていないですね。それどころか、格差や貧困は拡大しているようです。「R&Iファンド大賞2013」で、運用実績で投資信託・国内株式部門1位を取った鎌倉投信の「結い2101」の運用責任者だった新井和宏さんの企業経営や日本経済への提言です。

現在の資本主義は、損益計算書上の一定期間の利益のような短期的なフローを効率よく増やすことが最大の目的になっている。これでは、長期的な社会の成長は望めない。貸借対照表の純資産など「ストック重視の資本主義」への移行を実現させなければならない。
さらに、リターンを資産の形成とだけ捉えるのではなく、資産を増やし、社会を豊かにし、心も豊かになるとき、「幸せというリターン」がもたらされる。
そう考えると、現金、預金、不動産、工場、特許など企業の見える資産ではなく、社風、企業文化、社員力、社員のモチベーション、経営者の資質、社内外に築かれた信頼、理念に対する共感といった「見えざる資産」が重要になってくる。
そのためには、社員、取引先・債権者、株主は「コストの発生源」ではなく「付加価値を分配する対象」と捉えなおす必要がある。
このように考えていくと、社員、取引先・債権者、株主、顧客、地域(住民・地方自治体など)、社会(地球・環境など)、国(政府・国際機関など)、経営者の八方よしという考え方に行き着く。

一方でNPOへの苦言もありました。日本のNPOは活動全体や組織のあり方が「ボランティア」や「無償」に引きずられすぎてしまっている。企業であれ非営利組織であれ、お客様からいただいたお金を使って、新たな付加価値を生み出してゆくという構造は変わらない。違うのは、得た利益の行く先だけ。NPOは配当などでお金を再配分してはならないが、利益を出すこと、社員に給料を払うことは、何の問題もない。
日本のNPOには「付加価値へのこだわり」と生み出した付加価値の「見える化」が必要で、「社会的投資収益率」(SROI)による評価などを取り入れるべきとのことです。

持続可能な資本主義
新井和宏著、ディスカヴァー刊