【トーマスの読書室】自分らしいキャリアのつくり方

就職活動中のみなさんは、いろいろな不安を抱えながら活動していることでしょう。この本の中には、不安を和らげてくれるさまざまなヒントがあります。

情報を沢山集めている人がいますね。分からないことが多く、不安なのはよく分かります。しかし、事前に情報を集めすぎると、ネガティブなことにばかり目がいって、思い切った意思決定ができにくくなります。巷間に伝わるネガティブ情報を鵜呑みにして、イメージの悪いものや無駄に思えるものは最初からリストに入れないという態度や、効率的なキャリアづくりをしたいという発想では、貴重な挑戦の機会を失うことになってしまいます。
ジェラットは直感的意思決定論で、意思決定を論理的に行おうとしても、情報量が莫大で処理しきれず、また、どの就職先を選ぶと将来こうなるというシミュレーションをしようにも、不確定要素がありすぎてうまくいかない。キャリアを成功させるためには、論理より直感を磨いたほうが有効と言っています。
知らないからとれるリスクもあります。リスクをとらなければキャリアがどんどん縮んでいくのです。安定したキャリアを望む気持ちは分かりますが、現在のように時代の変化が激しいと、キャリアが根底から覆されるような事態にいつ見舞われるかわかりません。変化に対する耐性のない人は、キャリアショックに襲われる可能性がきわめて高いのです。変化に強いキャリアを築いておく必要があります。
就職活動で訪問した会社で、そこで働いている人に話を聞いてみるなどの足で稼いだ定性情報がカギになることがあります。このような情報から、その会社で働く自分の姿をイメージし、どんな気分になるかで判断してみましょう。

学生の内からいろいろな資格やスキルを身につけようと頑張っている人も見かけます。資格勉強をすること自体は悪くはないのですが、 必要な資格やスキルはこれとこれという具合に決め込み、それだけを身につければいいという姿勢に陥ってしまうと、真に要求される、変化に強く安定した成果を上げられる普遍性や抽象性の高い能力が獲得できません。
つまり、専門性というだけでなく、プロフェッショナルの働き方を目指す必要があるでしょう。そもそも何をするかというWHATから発想し、主体的に価値観を生み出せることが大事です。だから、プロフェッショナルにとって専門性は道具にすぎません。 いわれたことを漫然とこなすのではなく、どうすればもっと楽しく働けるかを考え工夫することで、主体性を自分に取りもどしましょう。
そうすることで、市場性のあるスキルや資格や専門性といったものだけでなく、継続的に自分のスキルを高めていくことのできる思考や行動特性が身についていきます。現代のような変化の激しい時代においては、このように自分らしいキャリアに気づいていくことこそが重要です。

自分に向いている仕事が何かは自分ではわからないという人や、その反対に、これが天職だと決めつけいる人もいます。仕事経験のない学生さんなどは職種名で仕事を選びがちですが、一般に流布している職業イメージと実際の仕事内容は、必ずしも一致しているわけではありません。自分のイメージと異なったときに、大きなリアリティギャップを感じることになります。
また、仕事の内容自体も日々変化しています。就職する前から自分の好きなことや、やりたい仕事にこだわるのは、あまり賢明なこととはいえません。ハーミニア・イバーラは、キャリアアイデンティティは事前分析や計画ではなく、実際に自分が行動を起こし、試行錯誤をするなかで見えてくるものなのだと言っています。
自分の仕事の範囲はここからここまでと、具体的に枠を決めてほしいという若者が増えているようですが、仕事というものは、その枠のなかで自己完結するようなものではありません。他人との関係性や協力得るなどしながら、進めてゆくものです。コミュニケーションが苦手という若者も多いようですが、コミュニケーションをを拒絶してしまったらうまくいくはずがありません。
自分でこれが天職だと決めつけてしまうと、その仕事に就けなかった場合は意欲が湧かず、不満を抱えたまま、ただ報酬のためだけに働くことになりかねません。やりたいことを絞るのではなく、やりたくないことを減らし、いろいろと経験しながらやりたいことはこれだったのだと気づくのが、理想的なキャリアの築き方です。天職とは、自分の強い動機が能力として発揮でき、なおかつ、やっていることに意味ややりがいを感じられる仕事のことです。型にはまった職務ではなく、仕事のプロセスが大切です。しかし、仕事のプロセスはやってみなければわからないものです。したがって、キャリアの基本は「行動しながら考える」ことです。
自分にはどんな仕事が向いているかを考えるよりも、就いた仕事で自分の動機を活かす働き方ができるかどうかが大事です。職種や業種よりも、やり方のマッチングに注目した方が良いでしょう。つまり、自分の動機はなんなのかを知ることが必要です。目標に向かって頑張ることがモチベーションになるのか、相手を説得することに喜びを感じるのか、ライバルがいると燃えるタイプなのか、相手をよく観察し攻略方法を考えることに快感を覚えるのか、だれもが「なるほど」と思わず膝を打つプレゼンテーションができたときに最高にうれしく思うのか、一所懸命やったことが認められ感謝されることに生きがいを感じるのか。人の動機はさまざまです。自分はどういったことがうれしいのか、どうすればやりがいを感じながら成果を上げることができるのかということを少し意識してみましょう。
どんなに事前に綿密にリサーチしても、その仕事を通じて自分らしさを感じられるかどうかは、実際にやってみるまでわかりません。まずはやってみる。そして、仕事をやりながら気づいたり学んだりしているうちに、自分らしいキャリアが少しずつできあがってくるのです。

 

自分らしいキャリアのつくり方
高橋俊介著、PHP新書刊