職場に活かせる行動分析学①「人は気持ちでは変わらない」

人は気持ちでは変わらない

やる気が感じられない部下に、「もっとやる気を出せ!」とか「やる気がないなら、帰れ!」などときつく言っても効果がないことは知っているはずなのに、つい言ってしまうことってありませんか?

または、なかなか結果が出ない部下に、「気持ちが足りないんだ!」とか「やる気を出さないからだ!」などと叱咤激励しても、やっぱり結果は出ないことは分かっているはずなのに、つい言ってしまうことってありませんか?

なぜ分かっているのに、そんなことをつい言ってしまうのでしょうか?

それは、私たちの中に「人は気持ち次第で変わる。」という思い込みがあるからです。つまり、「気持ち(心)さえ入れ替えれば人は変わるばす。」という考え方です。

そして、この考え方は「どうしてやる気が出せないのか?」という疑問に対して、その原因は本人の心の中にあるのではないかという方向に導きます。
その結果、多くの場合「性格的な問題ではないか?」とか「能力がないからかな?」あるいは「甘えているんじゃね?」などという仮説をいくつも引き出す割に、これといって明確な解決策に到達しないという羽目になるのです。

そして最も良くないのは、やる気が出せない⇒なぜ出せない?⇒仕事が出来ないから⇒なぜ仕事が出来ない?⇒やる気が出せないから⇒なぜ出せない・・・と、後はぐるぐると巡回するばかりで、どこまでも抜け出せないという「循環論」に陥てしまい、最終的には「いつも言っているのに分からない奴だ。」などと言われ、いつまで経っても根本的な解決にならないというケースは少なくありません。

しかし、人類は古くから人の心と行動の因果関係を、様々な角度から明らかにしようとして来たのも事実で、その中の一つに「心理学」という分野があります。

今回から数回に渡って紹介するのは、その心理学の中の一つである「行動分析学」をベースにした、人間の行動原理と、その職場での活かし方です。
”心”という見えないものの中に原因を探すという方向を、行動という目に見える動きから探るという、反対方向の考え方です。と言っても、私は学者ではないので学術的な話をするつもりはありません。
できるだけ分かりやすく、職場に活かせる行動分析学の世界を紹介したいと考えています。

行動分析学のユニークな考え方

行動分析学を語る上でまず理解してほしいことが「行動」についての定義です。

そもそも”行動”とは何かというお話です。

行動分析学では、行動かそうでないかを判断する基準として、「死人テスト」というインパクトのある呼び方をするテストを用います。
それは、死人にも出来ることは行動ではないという基準です。つまり、死人には出来ない行為が行動であるという訳です。

例えば、「話さない」や「歩かない」は死人でも出来るので行動でありません。この様に「~しない」というのは行動ではないというのが最も分かりやすいと思います。
当然ながら「話す」や「歩く」は死人には出来ないので行動とみなします。

では「殴られる」や「褒められる」はどうでしょうか?
これらは死人にも出来るので、やはり行動ではありません。このように「受け身」を現す場合は行動とは認めず、「殴る」や「褒める」が行動となります。

そしてもう一つ「座っている」や「大人しくしている」はどうでしょうか?
やはりこれらも行動ではありません。死人も誰かが座らせればそのまま座っていることが出来るからです。この様に「~している」という表現は、ある状態を現す言葉なので行動とはみなしません。「座る」が行動です。

この様に考えると、私たちが普段何気なくとっている行動も、何だか意味深いな~と感じませんか?

これから紹介する行動分析学は、人が~しないのは何故だろう?ということは考えません。なぜなら、~しないのは行動ではないからです。
ではどう考えるかと言うと、人が~するのはどんな状況なのか?あるいは、人が~すると、その人に何が起きるのか?など、人の行動を軸に考えます。

次回は、行動をもう少し具体的に捉えるために用いる「具体性テスト」と「課題分析」のお話しです。

参考文献
杉山尚子著「行動分析学入門 ヒトの行動の思いがけない理由 」
杉山尚子・島宗理・佐藤方哉・リチャード・W・マロット共著「行動分析学」
舞田竜宣・杉山尚子共著「行動マネジメント 人と組織を変える方法論」

ABOUTこの記事をかいた人

yasuhiro kouno

キャリアコンサルタントの高野(こうの)です。 「競争社会から共創社会へ」という大きな夢の実現を目指しています。 自分では気づかない未知の可能性に気づく体験プログラムを、多くの方に味わっていただきたいと思っております。