企業の社会的責任 (No.3)

シリーズ:内部統制 第3回

(前回は、「内部統制」がどの法律で規定されているかでした。)

内部統制は、上場企業や大企業とそれらの子会社が主な対象ということですが、それでは、中小企業はまったく無関係と考えていいのでしょうか。
どうやら、そうとばかりは言っていられないようです。その一つが、企業の社会的責任です。

「責任」というのは、なにやら重く、堅苦しいイメージですね。広辞苑では、「人が引き受けてなすべき任務。政治・道徳・法律などの観点から非難されるべき責(せめ)・科(とが)。」となっています。自分に課せられた義務を怠ったときの制裁などの不利益というような意味合いになります。これでは引き受け手がいなくなりますね。

ところが、英語では、ずいぶんニュアンスが異なります。日本語の「責任」に対応する言葉は、英語にはアカウンタビリティ(accountability)、レスポンシビリティ(responsibility)、ライアビリティ(liability)など複数あります。面白いことに、どの語にもable(することができる)の名詞形語尾abilityがついているといくことです。つまり、責めや科といった重荷を背負うことではなく、能力を発揮し義務を果たすといいうニュアンスのようです。自分の能力を示すということであれば、能力を認めてもらうことにつながりますから、これならやる気がでてきますね。

そして、アカウンタビリティ(accountability)、レスポンシビリティ(responsibility)、ライアビリティ(liability)のそれぞれが意味することも違っています。米国SOX法、日本の会社法や金融商品取引法が求めているのは、株主や政府へのアカウンタビリティ。accountは、「勘定する」「説明する」ということですので、数字を使ってちゃんと説明しなさいとうことです。日本では通常「説明責任」と訳されます。

ちょっと話が横道にそれてしまいましたが、ここで、お話ししようとしている社会的責任は、英語で言うと、レスポンシビリティ(responsibility)の方です。responseは「応答」ですから、社会の要請に答えるようにちゃんと行動しなさいということです。

では、どんな社会の要請に答えればよいのかというと、これが、時代によって、刻々と変化しているのですね。
例えば、ドラッカーのマネジメントには、こんな事例が載っています。

ウェストバージニア州西部のビエナは目立った繁栄のない地域でした。数少ない産業である石炭産業も1920年代末以降衰退していきました。この地域で入手できる石炭は品質が高くなく、コストのかかる処理工程を必要としていましたが、大手化学会社のユニオン・カーバイド社は、社会的責任の観点から、高失業率のこの地域に工場を建設することにした。もちろん、当時の法的規制を満たす公害防止設備も設置しました。1951年にこの工場は操業を開始し、政治家、政府関係者、教育関係者は、こぞって同社の社会的責任の遂行を称賛しました。

それから10年後、環境問題への関心の高まりとともに、ビエナの人たちも灰や煙の苦情を言うようになりました。1961年には、反公害、反ユニオン・カーバイドの市長が選ばれ、ビエナ工場の悪名はアメリカ全土に喧伝されることになってしまいました。

最近の社会の要請

このように社会的要請は時代とともに変化していきます。近年ではCSR(企業の社会的責任)などと呼ばれますね。そのCSRに関する活動例を少しご紹介しましょう。

化学業界では、1980年代後半ごろから、レスポンシブル・ケア(RC)ということを言い出しました。化学製品の開発から製造、物流、使用、最終消費を経て廃棄に至るライフサイクルにおいて、「安全・環境・健康」を確保すること、製造する化学製品の品質維持・向上を図ること、そしてこれからの活動について、対話を進めることで社会からの信頼を深めていくことを目指す活動です。

エレクトロニクス業界では、2004年に電子業界CSRアライアンス(EICC)を組織して、エレクトロニクス産業、およびそのサプライチェーンにおいて、労働環境が安全であること、そして労働者に対する敬意と尊厳を持って処遇すること、さらに環境への責任とともに、業務を倫理的に行うための行動規範を定めました。(現在は、全産業に範囲を広げ、レスポンシブル・ビジネス・アライアンス(RBA)となっています。)

また、投資家の間でも、「ESG投資」ということが言われ始めましたね。ESG投資とは、財務情報に加え、企業の環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の情報も考慮する投資のことです。投資対象は主に上場企業だから未公開企業は関係ないように見えるかもしれません。しかし、ESGの視点は、融資でも組み込まれ始めています。そして、この流れの延長にあるのが、持続的な開発目標 SDGsであるし、持続可能な会社経営ということになります。(ESG投資やSDGsについては、こちらの記事「SDGsって何?」をご覧ください。)

(次回は、内部統制のしくみについてです。)

ABOUTこの記事をかいた人

Thomas

品質マネジメントや工程管理、コンプライアンス、リスクマネジメントなどの仕事に携わり、仕組みを動かすのはひとだと痛感しました。ひとがイキイキすると、職場や社会もイキイキします。