質問の効力「人を動かす質問」

「質問は、相手を強制的に特定の方向で考えさせる力を持っています。」谷原誠著『「いい質問」が人を動かす』より

社員がなかなか定着しない、育たないという職場において、その原因の一つは間違った命令と質問力の不足でないか?と私は考えています。
前回から、職場における「命令と質問」をテーマに考えていますが、今回は「質問の効力」について考えてゆきたいと思います。

質問の効力には色々ありますが、その中で最も強力なのが「人を動かす質問」です。

部下を持つ人は、この質問方法を上手に使うことができるかどうかが、良い上司か否かの分かれ目となります。

人は、命令よりも自分で決めた事に喜んで従う。

成功している会社の上司は、命令ではなく質問形式の指示をする人が多いようです。

例えば、「この仕事、何としても今日中に済ませろ!」と「この仕事、何とか今日中に済ませておいてくれる?」では、どちらの方が「よしやろう!」と思いますか?

おそらく後者の方だと思います。
前者は、上司との関係性が良ければ然程問題はないと思いますが、そうでなければたとえ簡単に出来る仕事でも”やらされ感”があり、モチベーションが上がり難いと思います。

しかし、後者の言い方では未だ「人を動かす質問」にはなっていません。

では、「この仕事、何とか今日中に済ませておいてくれる?」と「この仕事、今日中に済ませるにはどうすればいい?」ではどうでしょうか?

どちらも、”今日中に”という期限は決まっていますが、前者は了解を求めているだけなので、相手の返答は「はい、分かりました」となることが予想できます。
しかし後者は、”どうすれば出来るのか?”という問いに答えることになるので、相手はどんなやり方をするのか伝えなくてはいけません。

これが、「人を動かす質問」という訳です。
相手は、どうすれば今日中に済むのかを考えるだけでなく、自分でやり方を決めて、それを口頭で宣言し、しかも宣言通りに仕事をすることになるのです。
もちろん、自分で決めたやり方なので”やらされ感”はなく、むしろ”任され感”が高くなることが期待できます。そして宣言通り、または宣言よりもスムースに仕事を済ませることができれば、達成感も手に入れることが出来るのです。

さらに、仕事を済ませた相手に「ありがとう、早くできたね。助かったよ(笑)」と一声かけるだけで、その相手は”役に立った感”が増すというおまけまで付いてくるのです。

この様に、質問のしかたによって、人は考えるだけでなく快く行動するようになります。

人を動かす質問の落とし穴にご用心

質問は、する人の意図で相手をコントロールする”魔法の杖”と化すことがあります。

例えば、「長生きしても健康でいる自信はありますか?」「ガンになって苦しむのは貴方だけですか?」「医療費負担が増えた時の対策はできていますか?」などの、老後や病気の不安を煽るような質問です。
これらの質問は、漠然とした不安を抱えながらも普段はあまり考えていない人にとっては、「あっそうか、考えなきゃ」という動機付けになりやすく、続けて「今なら、○○だけで●●が叶うキャンペーン中ですが、どうされますか?」など言って、セールスに誘うという手法に使われたりします。

私は、この手の質問をすべて否定するつもりはありませんが、せめてその”からくり”は知っておいた方が良いと思います。なぜなら、職場において上司が人を動かす質問を乱用すると、時に部下の尊厳や良心に反した答えを強制的に求めることになり、意図としなくともパワハラになるからです。

部下「すみません、契約取れませんでした」
上司「そうか、売り上げが下がったら、おまえの給料はどうなると思う?」
部下「・・・」
上司「まともに出ると思うの?どうなの?」
部下「いや、出ません・・・」
上司「そうだよね~。だったらどうすばいい?」
部下「頑張って契約取るしかありません」
上司「そうか。で、どうやって頑張るの?」
部下「えっ・・・」
(気分が悪くなるのでもうやめます)

この様に、上司は確かに命令口調ではなく質問をしていますが、部下は報告しても何も得るとがないばかりか、ストレスしか感じません。しかも質問されているので形式的には答えていますが、自分の意思ではなく上司に誘導されて強制的な答えを強いられています。
これは立派なパワハラです。

この様に、質問のしかたによって、人はいとも簡単に他人を傷つけることもできるのです。

部下を成長に導く質問

では気分を変えて、人を動かす質問がいかに部下の教育に有効かというお話です。
冒頭でも述べましたが、人は自分が考えて導いた答えには喜んで従います。
つまり、部下を育てるには、部下自身に課題を解決する策を考えさせる質問をすれば良いということです。

例えば・・・

部下「すみません、契約取れませんでした」
上司「それは残念だったね。何かこっちに不備があったのかな?」
部下「不備というより先方が仰るには、○○社より値引き率が低いと言われました」
上司「そうか、○○社との違いはしっかり説明できたの?」
部下「それが、もう○○社と契約したから、と言うだけで聞いてもらえませんでした」
上司「それはきつかったね~。ところで、次にまた提案できるなら今度はどうする?」
部下「今回は○○社に出遅れたので、次は早く動けば・・・」
上司「そうか。他にはどんな手があるかな?」
部下「そうですね~、もっと商品に目が行くよう、色別サンプルを増やすとか・・・」
上司「いいね。それ、次の○○産業の商談までに用意できる?」
部下「2週間後ですよね。ちょっときついかもしれません」
上司「そうか、じゃどうすれば間に合うかな?」
部下「私が制作部に手伝いに入れば何とかできるかもしれません」
上司「分かった。私から制作部に連絡を入れるね。で、いつから入る?」

といった感じです。
上司は一切命令も指示もしていませんが、契約が取れなかった部下に次のチャンスを与え、何が課題で次はどうすれば良いかを考えさせ、そのためにすべき行動まで部下が自分で考えるように導いています。
もし部下が迷ったり、どうすればいいのか分からない時は、その点が部下が抱えている課題だと、本人に気づかせることもできます。
または、上司が自分の経験をヒントとして与えて、「貴方ならどうする?」と考えさせることもできます。

上記の例は出来過ぎかもしれませんが、上司が逐一指示を出したり、答えを与えているううちは、部下は育ちません。待ちの姿勢で受身の上手な人材となるだけです。
部下を育てたいなら、質問をすることです。正しい質問には、人を育てる力があります。

まとめると

質問には、相手に考えさせて行動させる力があります。
それだけに、使い方を間違えると、部下を育てるどころか、大切な人材を潰してしまうことにもなり兼ねません。

質問上手は、出来る上司のマストスキルです。

 

次回は、部下を厳しく指導する時に有効な「自己理解を深める質問」です。

ABOUTこの記事をかいた人

yasuhiro kouno

キャリアコンサルタントの高野(こうの)です。 「競争社会から共創社会へ」という大きな夢の実現を目指しています。 自分では気づかない未知の可能性に気づく体験プログラムを、多くの方に味わっていただきたいと思っております。